——その「仕組み作り」の一環として、在日インドネシア人への支援活動に取り組まれているわけですね。具体的に、どのような活動に力を入れていますか。
インタビュー調査を通じて多くの方から「人生の物語」を預かるうちに、単にデータを収集して去るのではなく、何らかの形で彼らの生活に寄与したいと考えるようになりました。
特に力を入れているのは、情報へのアクセスの改善です。多くのトラブルは、知識の不足や、情報の非対称性から生まれます。自分の権利はどこまであるのか、契約書のこの条項はどういう意味か。困った時に、警察や役所以外にどこを頼ればいいのか。そうした情報をあらかじめ持っておくことが、異国の地で孤立しないための最大の防御になります。
——問題が起きてからの「対処」ではなく、起きる前の「予防」に重心を置いているのですね。
そうです。支援という言葉は、時に上下関係を生んでしまいます。助ける側と助けられる側。そうではなく、自分たちの権利や社会の仕組みを「知る」ことで、誰もが自律的に動けるようになること。それが私の理想です。
インドネシアには【相互扶助】(ゴトン・ロヨン)という精神があります。しかし、日本という異文化の中でその精神を維持し、持続可能なものにするためには、個人の善意や特定のリーダーだけに頼っていては限界があります。
——コミュニティを持続可能にするって、本当に大変なことですよね。
本当にその通りです。これまでの在日インドネシア人コミュニティは、熱心な個人に依存する傾向がありました。しかし、それでは継続性がありません。滞在期間が長期化し、日本に腰を据えて暮らす【定住者】が増えている今、必要なのは「誰が担当しても機能する、助け合いのシステム」です。
——ワオデさんの歩みをうかがっていると、「研究者」と「インドネシア人コミュニティの一員」という二つのアイデンティティが、一つの大きな志の中で溶け合っているように感じます。最後に、今後の「野望」について教えていただけますか。
まずは、現在取り組んでいる博士論文をしっかりと書き上げることですね。その先の野望としては、日本とインドネシアという二つの国のあいだで揺れ動く人たちが、構造の荒波に飲み込まれることなく、自らの意思で人生を選択できるような社会の土壌を耕したい。
日本という国が、単なる「出稼ぎ先」というインフラとしての場所ではなく、多様な背景を持つ人々が共に尊厳を持って暮らせる「ルーマ」になり得るか。私はその問いを、研究と活動の両輪で追求していきたいと思います。





