ーー 手紙を手がかりに、何が起きていたかや、どのように状況が変化したかを推理していく。探偵みたいですね。実際にどんなところが楽しかったですか?

楽しかったのは、自分で史料を読みながら、当時の社会の人々の「支配する/支配される」の関係性が、実際のところどんな感じで動いていたのかわかってきたことです。

私が扱った史料は、幸いにも本にまとまっていたので、誰でも手に取って読むことができます。一方で、他の人が読み飛ばしてしまいそうな箇所をじっくり読んでみたり、いつ書かれたかわからない手紙を「この人の名前が出てくるということは○○年頃かな?」と判別してみたりと、まだまだ自分にもできることがありましたね。特に、修士1年生のときに気づかなかったポイントを、修士2年生になって気づけるようになったのはうれしかったです。

ーー 同じ史料を相手にしていても、知識が身に着いたり、興味関心が変化したりすると、見え方が違ってくるんですね!面白いです。

そうなんですよ。近世や近代に比べて、古代・中世は、残っている史料が少ないんです。『平安遺文』[1] … Continue readingに収められた古文書も、4000通くらいしかない。4000通と聞くと、多いなと思うかもしれませんが、テーマを決めて選んでみると、意外としぼられてしまいます。そうすると、同じ史料を繰り返し繰り返し、読むことになる。繰り返していくうちに、以前の自分では見えなかったものも見えるようになってくるんですよね。それに、面白い史料って、いろいろな角度で読み解ける可能性を秘めているものなので。

▲平安遺文も出版されています

私の研究テーマは「紛争解決のありかたから中世の社会のようすをさぐる」ということなので、もちろん興味をもって取り組んでいますが、それにプラスして「むかし読んだ史料が、いま見ると見方が変わっている」ということも、個人的にはモチベーションになっていると思います。

次回は具体的にどのような手順で研究を進めたのかについて伺います。

References

References
1 歴史家の故・竹内理三氏が編纂した、平安時代の古文書・金石文などを年代別にまとめた史料集。同氏が編纂した鎌倉時代の史料集は『鎌倉遺文』。『平安遺文』『鎌倉遺文』は、東京大学史料編纂所によってフルテキストデータベースが公開されている。
https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w09/search
https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w11/search