ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。

第七回は日本中世社会研究の佐藤雄基准教授です。

興味を持ったきっかけ

Q1-1. 本日はよろしくお願いします。佐藤先生の研究テーマは「日本中世社会における法と文書の利用」 とうかがっています。日本の中世(12世紀から16世紀)は、武士が大きな権力をもった時代ですね。佐藤先生の研究では、その時代の社会のしくみを、法律や文書からさぐっていくということで、まずは、このテーマにたどりつくまでのいきさつを教えていただけますか?

よろしくお願いします。実は私、大学に入学した当初は、日本史をやりたいとはまだ思ってなかったんですよ。

ーーということは、入学してから何かきっかけがあったんですね。

そうです。当時、東京大学駒場キャンパスで教えていた義江彰夫先生[1] … Continue readingが、1~2年生向けにゼミを開講していたんです。まだ専攻を決める前の学生向けの授業でした。授業の内容は、現代語訳つきの歴史資料をプリントにして配って、先生と学生どうしで思ったことを自由に話してみよう、みたいなものでした。

▲その当時の実際のレジュメ

ーーそれは面白そうです。例えばどんな資料が配られたんですか?

その年は、平安時代初期(9世紀前半)に書かれた短い物語と、平安時代末期(12世紀前半)に書かれた同じ物語を読み比べるというゼミで、短い物語(説話)を集めた「説話集」という作品を使いました。

平安時代の初期に書かれた『日本霊異記』と平安時代末期に書かれた『今昔物語集』です。家族とか交易とか死生観とか、毎回テーマを決めて、そのテーマを考える材料となりうる物語を先生が選んでくれて、それらを読み比べました。平安時代初期に書かれた(奈良時代の社会を背景にした)お話と、平安時代後期にリメイクされた同じお話をよーく見比べてみると、お話の大筋は変わっていなくても、たとえば家族を呼ぶ呼び名が変わっていたりする。それをもとに、社会がどう変わっていったのかをみんなでワイワイ話してみよう、とかありましたね。

▲それぞれ文庫化もされています

References

References
1 注釈:1943年生まれ。1971年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。北海道大学助教授、東京大学教養学部教授、帝京大学経済学部教授を経て 現在、東京大学名誉教授 ※2009年10月現在
【主要著書】『鎌倉幕府地頭職成立史の研究』 『日本通史1 原始古代中世』 『神仏習合』 『歴史学の視座』
https://www.yoshikawa-k.co.jp/author/a13723.html