学術的価値について

ところで注意していただきたいのは、学術的な文献・資料であっても、その学術的価値は一様ではないということです。

例えば大学の機関リポジトリ[1]研究機関が主体となって所属研究者の知的生産物を電子的に集積・保存・公開するシステムのことです。で公開されている論文の多くは紀要論文と呼ばれているもので、他の研究者からの査読を経ていない、やや信頼度の低い資料とみなされます。これに対し、学会が刊行する雑誌に掲載された論文は査読論文と呼ばれ、信頼性の高い情報ということができます。

また、情報は日々蓄積されていくものです。古い文献であればあるほど、現在の知見とは異なっていることが多くなります。これは必ずしも古い知見が間違っているという意味ではなく、書かれたものは常にその執筆者の立場・考え方・状況を反映しているということです。

すなわち、学問における事実はさまざまな仮説や議論を経てアップデートされていくもので、それがいつの時代、どんな立場の誰によって書かれているかを正しく見極めなければならないということです。

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それでは、人文学の営みについて簡単に説明を終えたところで、実際にどのように人文学の研究を行っていくのか「構想・検索・調査・執筆・公開」の5段階に分けて説明していきたいと思います。

前から読み進めてもらうことを推奨しますが、気になるところから取り掛かっていただいても問題ないですし、自分が今つまづいているところから読み始めてもらって構いません。

References

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1 研究機関が主体となって所属研究者の知的生産物を電子的に集積・保存・公開するシステムのことです。