Q2-1. モンゴル帝国史を専門分野にするにあたり、まずは何から始めましたか?

高校生のとき最初に手にしたのは、研究書ではなく、NHKが出版していた写真入りの書籍『大モンゴル』[1]NHK取材班『大モンゴル1―蒼き狼 チンギス・ハーン―』角川書店,1992以下全4巻。いま見ても、かなり貴重な資料が満載のものです。

大学に入ってからは、いろんな研究者の名前を知り、そうした有名な先生方の概説書をいろいろ読みあさりました。ただ、そこから自分が何か新しいことを発見したりする、ということは非常に難しいということもわかりました。でも、もっと知りたい!という知識欲は強かったですね。

そんな中で転機になったのは、“海の歴史ブーム”でした。講義や本で海の歴史がよく取り上げられていたので関心をもち、研究もその方向に進み、のちには様々な分野の研究者が参加した共同研究プロジェクト、「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成―寧波を焦点とする学際的創生」、略称「寧波(ニンポー)プロジェクト」に、私もモンゴル帝国史研究者として参加することになったのです。

モンゴル帝国といえば、ユーラシア大陸の大部分を支配し、栄えた“陸の帝国”のイメージがありますが、“海の帝国”化していったのだ、ということは一部研究者のあいだで既にいわれていました。しかし、史料にもとづいて実証されたという感じではありませんでした。そこで、“海の帝国”という視点で、モンゴル帝国史をやろうと考えました。いまでは、あまり珍しくないテーマになってしまいましたけれども。ただ、モンゴル時代といえばやはり中央アジアなので、海域アジアをやるというのは世界的に見れば多くはないです。

▲ジャワのトゥバンという漁村の桟橋(モンゴルの遠征軍が上陸)

次回に続きます。

References

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1 NHK取材班『大モンゴル1―蒼き狼 チンギス・ハーン―』角川書店,1992以下全4巻