ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。
第八回は近代日本政治思想史研究のNさんです。今回のインタビューでは、政治思想史を専門としているNさんにお話をうかがいます。Nさんは一度公務員として霞が関にて役人を勤めたあと、大学院に戻る選択をしました。彼の研究内容と働く中での経験との関わりについても深ぼっていきたいと思います。
研究の進め方
──大学院で今も研究されていると思いますが、研究をしていて面白いのはどういったところでしょうか?
まず、世界の解像度があがっていくのは面白いと感じますね。この時代にこういうことがあり、それがこういう形で今とつながっている、だからここはこうなっている、みたいなことが分かるわけです。今私が生きているこの世界と、書籍でしか読んだことのない世界が、あるところでつながっていることを発見できるのは面白いですね。
また、一点目と関連しますが、当時のさまざまな課題に向き合った人たちの著作を読むと、生きている時代や地域が全然違っても「あぁやっぱりそこ悩むよな」「意外とおんなじこと考えているんだな」と、どこか近くに彼らを感じる瞬間があります。彼らの残したテキストを読んで解釈して研究するということは、時代を越えて彼らと議論をしているようなものですね。テキストを通じて、彼らとの議論を楽しんでいる感覚です。
そしてもうひとつ、自分が面白いと感じたことをまとめると、他の人が「それ面白いね!」と言ってくれることがあります。自分が面白いと思ったことを通じて他人とつながれるのは素晴らしいなと思います。この点は特に大学院に戻ってきて強く感じるところですね。
──研究自体の面白さに加えて、誰かと研究を通じてコミュニケーションする面白さもあるんですね。そうすると、大学の外で研究するのはやはり難しいのでしょうか?
前職の頃は一人で研究を進めていましたが、やはり大変でした。自分と近しい関心を持っている人と「これ面白いよね!」と言い合いながら研究できることが、どれだけ心の支えになるかを痛感しましたね。あとは、私の段階だと、指導教官の存在は大きいです。自分一人だと、行き詰った時になかなか抜け出せなかったので、指導教官の存在は本当にありがたいです。大学院に戻ってからの進捗はそれ以前とは比べ物になりません。