──なるほど、仮説の有無を使い分けて資料を読んでいくんですね。その際、仮説はどうやって立てていますか?

これもこっちが教えてほしいくらいです(笑)正直に答えるととても感覚的になってしまいますが、自分としては「降りてくる」ようなイメージなんですよね。

──降りてくる?

色々考えていると「これいけるんじゃないか?」みたいな思いつきがある瞬間にパッと浮かんでくる感じです。仮説が浮かんだら、その仮説で行けそうか検証し、ほとんどの場合どこかで行き詰まり、悩み、そしてある時またパッと次の仮説が浮かんでくる、ということの繰り返しです。

悩んでいるときは苦しいですし、なんでこんなことやってるんだろう、みたいな気分になることもありますが、仮説が浮かんだ瞬間はまさに浮かばれる気持ちになります。研究の大きな喜びのひとつです。

──たとえばどんな時に降りてくるんですか?

思いつくタイミングは本当にバラバラで、資料を読んでいるときだけじゃなくて、他人と話していたり、映画を観ていたりするときもあります。おそらく、無意識のうちにいろいろなことを考えていて、その積み重ねがどこかで顕在化して仮説の形になるのかなと思います。

──ありがとうございます。ちなみに、普段どういった資料を使って研究を進めているのでしょうか?

研究対象が大正時代の人物なので、著作は基本的には本や雑誌などの出版物としてまとまっています。資料収集は大学の図書館がメインですが、最近は国会図書館のデジタルコレクションにお世話になっています。用語の検索もできてとても便利です。役所を辞めたその足で、国会図書館にアカウントを作りにいった甲斐がありました(笑)

ただ、手元に紙の資料があった方がやっぱりはかどるので、図書館やデジタルアーカイブでざっと目を通し、必要だなと思った書籍は、アマゾンや古書専門のECサイト、たとえば「日本の古本屋」などで購入しています。

▲国立国会図書館

最終回は研究の面白さについて伺います。