このインタビューは全3回シリーズ
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ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査が行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。

第五十回となる今回のインタビューでは、東京大学大学院学際情報学府にてトルクメニスタンの政治・メディア・情報統制を研究対象とし、計量テキスト分析やデジタルアーカイブといった情報学的手法を人文地域研究に応用している、鈴木朝香さんにお話を伺います。

「データ」と「身体性」——隠された声を拾い上げる研究者として生きる

——研究を通じて過去のトラウマを客観化し、乗り越えてこられたのですね。現在は、さらに新しい分野にも挑戦されているとうかがいました。

はい。現在はテキスト分析だけでなく、デジタルヒューマニティズ(人文情報学)の分野にも関心を広げ、中央アジアに関する写真のデジタルアーカイブにも挑戦したいと考えています。政治学に限らず、幅広く中央アジア地域研究に取り組んでいきたいです。

——政治学から情報学、そしてアーカイブ研究へと、軽やかに領域を越境されていますね。その原動力は何なのでしょうか。

正直なところ、「トルクメニスタンという国に縛られたくない」という思いが強いです。

もちろん、あの国での経験は私の研究者としての原点ですし、私のキャリアを形作った重要な要素です。でも、「あんな国のせいで、私の人生が決定づけられてたまるか」という意地みたいなものがあります(笑)。

——「あんな国」と言いつつも、そこには深い愛着や、現地に残してきた友人たちへの思いも感じられます。

そうですね。愛憎入り混じる複雑な感情です。政治体制は憎いけれど、そこで暮らす友人たちのことは大好きだし、彼らの暮らしをなかったことにされたくない。

だからこそ、私は研究者として、特定の地域や手法に固執せず、自分の可能性を広げていきたいんです。データ分析でも、アーカイブ研究でも、手法は何でもいい。重要なのは、その向こう側にいる「人間」を見失わないことです。

——今後、どのような研究者像を目指されていますか。

どんなに高度なデータ分析を行い、客観的な数値を扱うようになっても、そのデータの背後には、かつて私と一緒に餃子を作り、泥だらけのタオルを洗い、恐怖に怯えながらも必死に生きていた生身の人間がいる。そのことを、肌感覚として理解していることが私の強みだと思っています。

「データ」と「身体性」。この二つを結びつけ、隠された声を拾い上げられる研究者でありたい。それが、あの場所から生きて帰ってきた私の、責任のようなものだと感じています。

——壮絶な体験を乗り越え、それを知的な武器に変えて闘い続ける鈴木さんの姿勢に、強く心を打たれました。今後のご活躍を心から応援しております。本日は貴重なお話をありがとうございました。