ホーム ジンブン独学ノート 実践 実践編:スポークンワーズ研究①

実践編:スポークンワーズ研究①

0
実践編:スポークンワーズ研究①

ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。

第七回は戦争とスポークンワーズ研究の猫道(猫道一家)さんです。

猫道さんは1998年より演劇活動を、2008年よりスポークンワーズの活動を開始し、明治大正演歌のカバー、野外朗読、楽器との即興セッションなど、特色ある視点とテーマで「声」「言葉」の可能性を拡張する試みを行っていらっしゃいます。ウエノポエトリカンジャム, Poetry Slam Japan, KOTOBA Slam Japan等、ポエトリーリーディング/スポークンワーズ関連のイベントで司会も務めていらっしゃいます。

研究の方法

Q1-1. テーマが「戦争とスポークンワーズ[1] … Continue reading」ということで、どのようにこのテーマにたどりついたのか、経緯を教えてください。

まず、私自身がスポークンワーズの演者で、詩や文章を声に出してパフォーマンスする、ということをやっています。詩や文章は、自分で書いたものもあれば、他の詩人や作家が書いたものをカバーすることもあります。私の場合は、言葉を音楽にのっけてライブをすることが多いですね。

そういった言葉のパフォーマーが集まるイベントに出入りする中で、パフォーマーがいつものようにライブをするのではなく、好きなテーマで授業をしてみよう!という企画が持ち上がったことがあって。

当時私は塾講師の仕事をしていて、中高受験の社会科を教えていました。一方このイベントでは、猫道というパフォーマーとして授業をするので、「自分が実感をもって語れることって何だろう? 詩を書いて人前で発表することと、歴史とを結びつけた授業がしたい」と思いました。

この授業イベント企画で、私は3回、授業をしました。

最初の2回のテーマはこんなふうです。

第1回:明治大正の演歌

自由民権運動の時代、「演説歌」の始まりから「演歌」への流れ。諷刺や世相を歌にして、路上で歌う「演歌師」を取り上げた。ストリートミュージシャンの先駆けともいえる。

第2回:江戸時代の路上パフォーマー

言論が抑圧されていた江戸時代、路上パフォーマンスを行い、投げ銭をもらっていた人々がいた。中には社会風刺を取り入れたものもあった。

そして、第3回の「戦争とスポークンワーズ」。これが自分にとって、最も大事なテーマだったと思います。

戦争といえば、2010年台、私は安保法制[2] … Continue readingの抗議デモに参加していました。その他にも、共謀罪[3] … Continue readingや秘密保護法[4] … Continue readingに対する抗議デモに参加することが、自分の生活のなかに自然と溶け込んでいました。政府の行いに対して納得がいかない、自分や周りの人の生命が脅かされることに対して、声を上げ、ただし非暴力で抗議することが、当たり前になっていました。

そういった自分のスタンスが、反戦歌を歌ってきた人たちと通じるものがあるんじゃないか、と思ったんです。もちろん重いテーマなのですぐには取り組めませんでしたが、第3回目にしてようやく到達できたと思っています。

ーーそういったスタンスには、ご自身のバックグラウンドとも関係があったり?

そうですね、関係あると思います。当時私は、学習塾で働いていて、社会科を教えていました。その中で、教科書の中で書かれていること──例えば、憲法の基本的な理念とか、社会のしくみとか──を教えるんですが、やはり建前というか、現実との乖離が大きすぎて。大人として情けない……と思っていました。

そういった中で、欧米などでは当たり前に取り組まれている、「納得いかなければ声を挙げる」ということが、自分にとっても当たり前になっていった、という。もちろんデモだけでなく、選挙活動の手伝いをしたりもしていますが。

次回は具体的にどのような手順で研究を進めたのかについて伺います。

References

References
1 定義は様々ですが、本記事では「言葉を声に出すことを手段とするパフォーマンス」としておきます。言葉をが主体となるパフォーマンスという意味では、朗読やラップなども、広い意味での“スポークンワーズ”に含まれることがあります。一方、音楽の一ジャンルとしてのスポークンワーズは、「伴奏の上に、歌ではなく“話し言葉”を乗っけるタイプの音楽」というイメージになります。
2 安全保障関連法。2015年9月に成立。集団的自衛権の行使を可能にすることなどが盛り込まれ、戦後日本の安全保障政策が大きく転換することになった。
3 改正組織犯罪処罰法。2017年成立。法務省は、2000年に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」への加入を目的とし、そのためには国内の法律でも共謀罪などの犯罪化が必要であるためとしている。(https://www.moj.go.jp/houan1/houan_houan23.html)人権や自由、思想信条が侵害されることを危惧した市民や団体から、抗議活動や反対声明が多く起こった。(https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/complicity_secret/complicity.html
4 2013年成立。漏えいすると国の安全保障に著しい支障を与えるとされる情報を「特定秘密」に指定し、それを取り扱う人を調査・管理し、それを外部に知らせたり、外部から知ろうとしたりする人などを処罰することによって「特定秘密」を守るという趣旨の法律。「特定秘密」の範囲の広さや定義のあいまいさから、市民の安心安全な生活が脅かされるという懸念が生まれ、各所で抗議活動が行われた。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/complicity_secret/secret/about.html