ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。
第六回は地域博覧会研究のHさんです。
興味を持ったきっかけ
Q3-1. 研究をしていてどんなところが面白かったですか?
人間が新しいものごとに出会ったとき、どういうリアクションをするのかということにわりとずっと興味がある(モース『日本その日その日』[1]明治期に来日したお雇い外国人エドワード・モース(188~1925)が記した1880年代前後の日本の見聞録。
東洋文庫版が青空文庫で出版されている。とかで)ので、博覧会という文化を初めて耳にした金沢人ったちが「博覧会ってこういうものらしいですよ」「これを我らが北陸の地でやる意義ってのはこうですよ」と、手持ちの知識や自分たちのアイデンティティを一生懸命掘り起こしながら新しい文化を解釈しようとしている様子が面白かったですね!
とくに、当時からすでに博覧会のテーマになりがちな「開化」について、開化とは何なんだ!?と主催者たちがあれこれ考えて工夫して伝えようとしている反面、出品されたものは一見「開化」に見えないものもけっこうありました。そういった出品物を見ながら、さて博覧会のことをみんなどういうつもりで解釈していたのかな?と仮説を立てるのも楽しかったです。
ただ、出品物というのは数がものすごく多いし、ひとつひとつの出品意図がわかるわけでもありません。そして私の価値観で「これは注目すべき」と指摘した出品物が、はたしてそのとおりの価値をもつのか?ということまでは判断がつかないので、「たくさんのモノが集まる場」から何かを読み解くことの難しさと、書き手である私自身も、“いま生きているまさにこの時代の価値観の産物でしかない”であることを強く意識させられました。