ーー実際にどんなことを行いましたか?
手始めにやったことはこんな感じですね。
1)図書館でとりあえず関係ありそうな本を背表紙タイトルであたりをつけ、借りまくる
2)オンラインの蔵書検索システムで、自分の大学以外の資料を幅広く探す
3)とりあえずGoogle検索で日本の博覧会・地域博覧会に関係ありそうなワードを入れてみる
NDL OPAC、国立国会図書館リサーチナビ[1]NDL・リサーチナビについては別記事参照、国立国会図書館の「博覧会 近代技術の展示場」特集サイト、東京国立博物館の「館の歴史」ページはよくチェックしました。
あとGoogleBooksのフリーテキスト検索でも、思わぬワードで書籍が引っかかるので助かりました。
上記1)2)3)をやる中で、把握しなければならない情報の種類がざっくり整理されてきました。すごく単純化すると次の通りでしょうか。
A)江戸幕府および明治政府の、博覧会・博物館政策の歴史について、幕末~明治初期の基本的な知識
博覧会・博物館政策のはじまりは東京しかも東京国立博物館からなので、『東京国立博物館百年史』[2]東京国立博物館の成り立ちと歴史を豊富な資料で紹介する書籍。はかなり大きな基本資料でした。同博物館の資料室にも通い詰めました。
B)石川県金沢市の、幕末~明治初期の政治・経済・文化的な状況
幕末の人・モノ・カネ・システムを元手に明治時代ができていくので、そこは抑えておかないといけないという感覚がありましたね。なので加賀藩・石川県史の常識(地名や人物など)をインプットしていこうと決めました。
具体的には加賀藩・石川県史の研究者の書籍や論文、石川県内の美術館や博物館の紀要を探しました。そのうち代表的な研究者のひとり(金沢星稜大学の本康宏史先生[3] … Continue reading)に面会し、研究のヒントを頂くこともありました。本康先生に教えていただかないと進まなかった部分もあるのでありがたかったです。
C)金沢の明治5年・7年の博覧会に直接関係のある資料の全容把握
「誰が」「どういう背景で」「何を出品して」「どういう結果になったか」でそれぞれあたるべき資料が異なります。
「誰が」については博覧会規則、明治政府へのお手紙、出品目録の出品者名などからわかります。
「どういう背景で」については明治政府へのお手紙や、金沢地域向けの趣意書[4]団体や会社の設立、寄付金の協力依頼などの際に、それらの行いの趣旨に賛同してもらうために作成する文書。・博覧会規則が参考になります。
「何を出品して」については出品目録をとにかく見るしかありません。『明治期府県博覧会出品目録 明治四年~九年』( 東京文化財研究所美術部編)[5]明治4年~9年に日本国内で行われた地域博覧会で、現存する出品目録を翻刻(文字起こし)し、影印(スキャン)も掲載してまとめた資料。は死ぬほど見ました。
「どういう結果になったか」についてだけはあまりわからなかったですね。新聞記事とかもあまり残ってなかったので……
References
↑1 | NDL・リサーチナビについては別記事参照 |
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↑2 | 東京国立博物館の成り立ちと歴史を豊富な資料で紹介する書籍。 |
↑3 | 金沢星稜大学経済学部教授。江戸時代~明治時代の金沢を中心とした石川県の地域史・文化史・科学技術史や、「軍都」金沢の研究に功績がある。金沢の地域博覧会研究にあたっては、同氏著書『からくり師 大野弁吉とその時代-技術文化と地域社会-』(岩田書院)を大いに参考にしました。 |
↑4 | 団体や会社の設立、寄付金の協力依頼などの際に、それらの行いの趣旨に賛同してもらうために作成する文書。 |
↑5 | 明治4年~9年に日本国内で行われた地域博覧会で、現存する出品目録を翻刻(文字起こし)し、影印(スキャン)も掲載してまとめた資料。 |