多様性を考える
はじめに
2015年に策定されたSDGs(Sustainable Development Goals)でも、多様性の考え方を基礎に置いた17の目標が掲げられています。そもそも「多様性」とはいったいなんでしょうか。それは誰からみた多様性でしょうか。なぜ多様性が必要なのでしょうか。流行っている言葉だからこそ、今一度立ち止まって、多様性が目指すものをゆっくりと考えてみませんか。
『台湾生まれ 日本語育ち』
著:温又柔
白水社
多様性が取り沙汰されるのに呼応するように、「日本」「日本人」とは、という主張も増えてきました。この主張が行われる時、見落とされてしまう/無視されている「マイノリティ」がいます。それは、日本語で読み書き話し、思考するけれど「日本人」ではない人、親子で第一言語が日本語とそれ以外の言語に分かれている人たちです。彼らは国籍は日本ではないけれど、日本語を操り、日本で生活しています。この「マイノリティ」に属する筆者は、台湾で生まれ、日本に成長し、日本語で思考を行う台湾人です。彼女の人生と思考、家族と「国」の歴史を辿りながら、見ていなかった既にある多様性に気付く一冊です。
まとめ
「多様性」という言葉は、マジックワードかもしれません。口にするだけで何かが解決した気になってしまうという点で。
口当たりのいい言葉を簡単に口にしたときに零れ落ちてしまうものを丁寧に拾い上げるのも、人文学の一つの営みと言えるでしょう。多様性の文字を見たときに、「ムムッ、本当かな」と少し立ち止まって考えることができるようになれば、それは既に「人文学」をしているかもしれません。