月曜日, 5月 20, 2024

会社名  :株式会社ジブンジンブン

設立   :2024年4月1日

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『あなたが広げる人文学 ージンブン学をジブンごとにー』参考書籍リスト

はじめに

本日の講座では人文学の営みにおいて重要な「問いを立てる」ことについて、ジンブンアトラスというワークショップ形式でみなさんにも体験していただきました。人文学について少しでも理解でき、自分でも明日から取り組んでみようと思っていていただければ幸いです。

とはいえいきなり「人文学」に取り組むのはあまりにも範囲が広くて難しいはずです。そこで皆さんの興味関心に引っかかるかもしれない、そして世界を広げてくれるかもしれない、書籍をいくつか選んでみました。書籍の多くは「新書」の形をとっており、読みやすいものばかりです。

「本は全て読まなければならない」という義務感にとらわれず気になったところから是非つまみ食いしてみてください。そして気になった本については、関連する本を図書館で探すなどして、どんどん自分だけの人文学を広げていっていただければと思います。

著:伊藤亜紗
光文社新書

人は外界から得る情報のほぼ全てを視覚に頼っています。もしある日目が見えなくなってしまったらどうなってしまうのでしょうか?そして視覚障害者はどのように世界を「見て」、どのように自分の体を捉えているのでしょうか?世界の「見方」を変えれば、自分を含めた世界そのものが変わっていくという、人文学が行われるまさにその様子を美学者とともに楽しんでみましょう。

『ナマコの眼』

著:鶴見良行
ちくま学芸文庫

お正月にナマコを食べたことはあるでしょうか。海辺や水族館で見かけたり、触ったことがある人もいるかもしれません。海の底で物言わぬ地味な生き物・ナマコは、しかし日本からオーストラリアまでをもつなぐダイナミックな歴史の目撃者でもありました。ナマコの「足跡」を追い続けた筆者はその先に何を見つけたのか。海域アジア社会の精緻な案内書であるだけでなく、近年人文学で注目される「モノ研究」の実践としても価値ある名著です。

『「美味しい」とは何か:食からひもとく美学入門』

著:源河亨
中公新書

「美味しい」「まずい」は完全に主観的なのでしょうか?だとしたら美味しいレストランを探すのに他人の意見は参考にならないでしょうか?また知識が無ければ食事は楽しめないのでしょうか?はたまた料理は芸術なのでしょうか?そしてその「芸術」の意味は?…この本は以上のような食にまつわる問いを、哲学の一分野である「美学」の見地から読み解きます。さらにそのようなトピックを網羅することで、「センスの哲学」としての美学に入門できるという優れものなのです。

『教養としての大学受験国語』

著:石原千秋
ちくま新書

「この本は、大学受験国語の参考書の形をとった教養書である。あるいは、教養書の形をとった大学受験国語の参考書である」。著者自身によりそう説明される本書は、受験生が受験国語、とりわけ説明的文章・評論と呼ばれるような文章と向き合うときにしばしば抱く「わけのわからなさ」から、みなさんを解放してくれる可能性があります。わけのわからない文章を真正面から読み解くのではなく、その「舞台裏」、タネや仕掛けの暴露によって、ほかでもでない受験において私たちがこのような文章を読まされることになった経緯すら、明らかになるでしょう。

『歌う国民 唱歌、校歌、うたごえ』

著:渡辺裕
中公新書

「ふるさと」「われは海の子」などの懐かしさあふれる“唱歌”、皆で声を合わせて歌う“校歌”や“社歌”。卒業式で何を歌った?という話題で盛り上がることもありますね。そもそも「歌を習う」「みんなで歌う」というシステムは、どうして、どうやって日本に根づいたのか? もちろんそこには政府の思惑が大いにありましたが、それを受け取った民衆は、必ずしも為政者の思い通りではない形で、したたかに「歌」を利用し変容させていきます。明治・大正・昭和の歴史を「歌う」を通じて活き活きと描き出す良書。

『たのしいプロパガンダ』

著:辻田真佐憲
イースト新書

「本当に恐ろしい大衆扇動は、娯楽(エンタメ)の顔をしてやってくる」。プロパガンダといえば、国家・政府が民衆におしつける、つまらなくてうさんくさいものを想像しがちですが、本書が扱うのはその対極。私たちが楽しい!面白い!と思うものが実は最も強力なプロパガンダだというのです。日本やお隣の国々の歴史的な事例だけでなく、最近のカルチャー(例えば“萌えミリ”)の例も豊富に紹介。ニュースや広告、はたまた街角で見かけるあれこれに、「これってもしかして『たのしいプロパガンダ』では…?」と疑ってかからずにはいられません。読んだ後には世界の見え方がじわじわと変わっていく、スリリングな一冊です。歴史学だけでなく、比較文化研究や表象文化研究の第一歩にも。

『人文知』


東京大学出版会

ジンブンアトラスのスケールが大きい版とも言える「人文知」シリーズ。大学教授たちが3つのテーマに対してそれぞれの専門分野から、視点/観点と問い、そしてそれに対する考えを語ります。文学部と一括りにされた中のテーマの豊かさ、捉え方の豊富さ、そしていずれも身近なテーマからスタートしていることを意識しつつ、自分ならこのテーマにどんな視点を持つか、考えてみるのもおすすめです!

さいごに

人文学は自分が気になったことについて調べるところから始まります。「学問」と聞くと難しそうですが、問いを立てて答えを探していく、というと簡単そうに聞こえてきませんか。

本を読むのは勉強のため、ということももちろんあります。ですが、より大切なこととして本を読むことで他の人の問い・興味関心に触れる機会が増えます。本に書いてあることを盲目的に信じるのではなく、むしろ書かれていることに対して本当かなと疑問を抱くことで、新たな探究が始まります。そして自分では思いつかなかったような筆者の思考・視点を得ることで自分の中に新たな考え方が生まれることが本を読む理由であり、楽しさの一つです。

人文学が取り扱う範囲は他のどの学問分野よりも広大で、誰でも今日から人文学を始めることができます。是非これを機会に人文学を広げる活動に参加していただければ、それに勝る喜びはありません。

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