ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。

第七回は日本中世社会研究の佐藤雄基教授です。

Q2-1. では、具体的にどうやって研究を進めたかについてもお尋ねしてみたいと思います。使った主な資料としては、『平安遺文』『鎌倉遺文』といった古文書集、『兵庫県史』・『熊谷市史』のような自治体史の中の中世史料集、東京大学史料編纂所の『大日本史料』[1]フルテキストデータベースあり。
https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w61/search
『大日本古文書』[2] … Continue reading『大日本古記録』[3]東京大学史料編纂所「古記録フルテキストデータベース」あり。
https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w16/search
などなど……とうかがっています。

史料集のテキストデータベースがオンライン公開されることも増えて、便利になりましたよね。一方、これらの史料集を、自分の目的に合わせてどう使うか、ということも、もっと重要です。

一般的な法制史の研究は、「こういう裁判の制度やしくみがあった」という研究が多いですが、私の研究テーマはもう一歩踏み込んで「こういう裁判の制度やしくみがあった。では、実際に紛争解決の現場で、どのようにその制度が使われていたのか?」というものです。ということで、先ほど挙げた史料集は、制度の基本的な理解や、史料の所在場所などのベーシックな情報源として、大いに活用しました。

自分が相手にする史料――手紙や政治文書の一つ一つには、それぞれ独自の文脈があります。しかし、個々の史料だけを相手にしていても、わからないことも多い。日本中世史には、先人が積み上げてきた重厚な研究史があります。それらに学びながら、一点一点の史料の正確な理解を試みていきました。

ーー目的に合った資料を正しく集めて、活用することが大切なんですね。それにしても、「この時代の研究をするなら○○は読んでおくべき」「こういう情報がほしいなら○○にあたってみるといい」みたいな情報には、どうやってたどりついたらいいんでしょうか?

そうですよね。今ならインターネットで手がかりを探すこともできますが、私の学生時代にはまだなかったので、他の人から教えてもらうことが多かったです。

例えばゼミのガイダンスで教わったことをまねてみたり、自分の発表の準備をするときに先生や先輩から教えてもらったり、とりあえず見よう見まねでやってみていましたね。文学部ってちょっと徒弟制っぽい雰囲気もあるので、「師匠や兄弟子から教わる」みたいなようすをイメージいただいてもいいかもしれないです。

ーー検索もいいけれど、他の人との情報交換。一見非効率のようで、意外と早道なのかもしれないですね。

そう思います。逆に、何か決まったマニュアルがあって、「読むべき本リスト」を消化していくような進め方はちょっと難しい。「こういうことに興味があるんですよね」と人に話して、「だったらこういう先行研究があるよ」などとコミュニケーションを取りながら、自分の研究テーマが定まっていく。これもひとつの「研究の進め方」といえると思いますよ。

References

References
1 フルテキストデータベースあり。
https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w61/search
2 『大日本古文書 家わけ文書』フルテキストデータベース→https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w10/search
『大日本古文書 編年文書』フルテキストデータベース→ https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w08/search
3 東京大学史料編纂所「古記録フルテキストデータベース」あり。
https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/w16/search