ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。
第三回は教育史研究のHさんです。
興味を持ったきっかけ
Q1-1. 本日はよろしくお願いします。博士論文のテーマが「1920~30年代の教育学の歴史」ということですが、そもそもこのテーマにたどりついたいきさつを教えてください。最初からいきなりこのテーマを見つけた……というわけではなさそうですよね?
よろしくお願いします。そうですね、最初からこのテーマだったわけではないです。学部生のときまでさかのぼると、哲学研究室で、ベルクソン(フランスの哲学者)[1]アンリ・ベルクソン(Henri Bergson, … Continue readingを研究していました。一方で、大学院に進学したら、映画の研究をしたいとも思っていました。
そうすると、学部の卒業論文は、ただの哲学研究ではなく、メディア研究に寄せた卒論を書く必要が出てきて。そこで、ドゥルーズ(フランスの哲学者)[2]ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze, … Continue readingが、ベルクソンの著作を映画の文脈で解釈する、ということをやっていたので、自分もそれに似たことをしようとした、という感じです。
ーーまずはベルクソンのお話と、映画の話の2つが大きなテーマとして出てきましたね。まず、学部生のときに、研究対象としてベルクソンを選んだのはなぜですか?
ベルクソンを選んだのは、哲学概論の授業で説明を受けて、いちばん魅力的に思えたからでした。哲学概論は、哲学研究室に入りたての人は受講必須の、哲学研究の入門的な授業です。私はそんなに哲学者の名前を知っているわけではなかったですし、よくわからないまま哲学研究室に入ったようなところはありました。
ーーそうはいっても、ご自身の興味や関心と、哲学はそう遠くなかったのではないですか?
そうですね。私は「●●(哲学者)の著作を研究したい!」というモチベーションよりは、“考え方そのもの”について考えたいな……というぼんやりしたモチベーションで哲学研究室に入りました。というのも、もともと私自身、具体的な対象をつきつめるよりも、具体的な対象を扱うときの“手続き”のほうに興味があるほうなんです。
例えば、「●●という小説に興味がある」とひとくちにいっても、私の場合は、小説の中身よりも、その小説が人々にどのように語られていたか(=批評)に興味が向くというような。そういう観点で人や物に接すると、自分の考え方以外にも、こういう考え方・見方があるんだ、と知れるのがおもしろいです。そうしているうちに、どんなことでも「どのように語られていたのか?」と、メタ的に把握しようとする態度が徐々にできていきました。中でも、映画がそうでしたね。