ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。
第八回は近代日本政治思想史研究のNさんです。今回のインタビューでは、政治思想史を専門としているNさんにお話をうかがいます。Nさんは一度公務員として霞が関にて役人を勤めたあと、大学院に戻る選択をしました。彼の研究内容と働く中での経験との関わりについても深ぼっていきたいと思います。
研究の進め方
──今は働きながら大学院に通っているということですが、どのように研究を進めているのでしょうか。
はい、民間企業で働きつつ、社会人大学院生として大学院に通っています。研究時間は平日の勤務終了後と土日のどちらか一方、という感じです。
──研究時間がかなり短い印象を受けますが、大丈夫なのでしょうか?
実際短いと思いますし、本当はもっと時間をかけてやるべきだと思っています(笑)ただそうも言っていられないので、なるべく効率的に進めたいと考えています。
──たとえばどんな工夫をしているのですか?
工夫というほどではないですが、時間をかけて没頭するべきタスクと、決められた時間でテキパキこなすべきタスクをわけて、前者を土日、後者を平日に割り当てています。具体的には、メインとなる資料を読み込んだり全体の構成を考えたりするのが前者、それを踏まえて文章に落とし込んでいったり関連文献を読んだりするのが後者です。前者をベースに後者が決まるので、週末に決めたタスクを平日にこなす感じですね。
──思想史は資料を読むことが多そうですが、短い時間の中で資料はどうやって読んでいますか?
僕もまだ手探りなので、偉そうなことは言えません。むしろ教えてほしいです(笑)。ただ、二つのスタイルを区別して資料を読むことを意識しています。
ひとつは仮説をもって読むスタイル。資料はあくまで論文のための手段と割り切って、「こういうことが書いてあるんじゃないか」「こういう風に読めるんじゃないか」と思いながら読んでいくスタイルです。このスタイルは効率的ですが、一方で自分の読みたいように読んでしまい、正しい資料読解から外れてしまうリスクがあります。
それを補うのがもうひとつのスタイルで、こちらはなるべく仮説を排除し、著者の論理を著者の言葉で理解できるように読むスタイルです。このスタイルは時間がかかりますし、最終的にアウトプットにつながらないこともしばしばありますが、自分の思い込みから逃れるために不可欠です。
私は主張を作り上げるときは「仮説スタイル」で読み、ある程度議論ができたら同じ資料を「仮説排除スタイル」で読んで再検討する、という形で進めています。