ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査が行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。
第二十回となる今回のインタビューでは、教える現場での疑問を「コーパス」という言語データ分析のアプローチで解き明かし、日本語教育の新たな可能性を切り拓く、研究者の三好優花さんにお話を伺います。
研究者への道と修士課程の壁
ただ、問題は「どうすれば日本語教師になれるのか」が分からなかったことです。教員免許のように、大学で特定の単位を取れば資格がもらえる、という明確なルートが見えませんでした。そこで思い切って、全学ゼミでお世話になった先生にメールで「日本語教師になりたいのですが、どうすればいいですか」と相談したんです。
——直接メールしたんですね。勇気ある行動ですね!
今思えば「まずは自分で調べなさい」という話なのですが(笑)。先生はとても丁寧なお返事をくださって、日本語教育能力検定試験というものがあること、そして大学で教えたいのであれば、専任教員になるには博士号があった方がよい、ということを教えてくださいました。その言葉を聞いて、大学院に進学し、博士号を取ろうと決めました。
——ずいぶん早い段階で、博士課程まで見据えていらっしゃったのですね。
周囲の大学院生は、純粋に研究が好きで、その道を突き詰めていたら自然と博士課程に進んでいた、という人が多いように思います。でも、私の場合は少し違っていて、正直に言うと、当時はそれほど研究が好きではありませんでした。本を読んだりして「勉強」するのは好きでしたが、自分で新しいことを見つけ出し、発信していく「研究」という営みには苦手意識があって。大学の日本語教師になる、という目標を達成するための手段として、博士課程への進学を考えていたんです。
——目標が先にあって、そこから逆算して進路を決められた。
そうです。修士課程では、その全学ゼミの担当だった菊地康人先生のもとで学びたいと思い、英文科ではなく言語学の専攻に進みました。ただ、いざ大学院に入ると、自分の研究テーマが全く見つからなくて……。当時、学部4年生の時から日本語学校で非常勤講師として教えていたので、菊地先生からは「現場で疑問に思ったことを研究テーマにしたらいい」とアドバイスをいただいたのですが、それでもなかなかピンとこなかったんです。
結局、学部時代の卒業論文で扱ったテーマと関連のある、自動詞と他動詞について修士論文を書くことにしました。
——自動詞と他動詞、ですか。
はい。例えば、学習者が「電気がついた」と言いたい場面で、間違えて「電気をつけた」と言ってしまう、といった誤用がよくあります。特に、硬い瓶の蓋を開けようとして「開かない、開かない……あ、開いた!」と言う時、私たちは自然と自動詞の「開く」を使いますよね。でも、言語によっては、自分が力を加えているのだから、と他動詞を使って表現する方が自然な場合もあります。こうした選択のメカニズムは、日本語教育において非常に重要なテーマなんです。
ただ、これはあまりにも王道のテーマで、すでに山ほど先行研究が存在します。私なりに選択基準を整理し直して論文にまとめたものの、今読み返しても、新規性という点では乏しいものだったな、と感じています。
最終回はコーパスとの出会いについて伺います。







