ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。

第四回となる今回のインタビューでは、歴史研究者の向正樹先生にお話をうかがいます。先生は、一般に「陸の帝国」と見なされるモンゴル帝国を「海の帝国」という視点から研究し、漢文史料のみならずアラビア語の墓碑などを読み解くことで、その多角的な姿を明らかにされています。

興味を持ったきっかけ

Q4-1. 初学者があたるべき文献、避けたほうがよい文献などはあるでしょうか?

歴史学の“考え方”を書いている本がまずおすすめです。

東京大学教養学部歴史学部会『歴史学の思考法』岩波書店

桃木至朗『市民のための歴史学―テーマ、考え方、歴史像』大阪大学出版会

福井憲彦『新版 歴史学入門』岩波書店

私自身、市民講座を担当することも多いです。そこで実感することが、知識は本で得られても、考え方を学ぶのは難しいということ。その点、歴史学の“考え方”を知ることができる上記の文献は重要だと思います。言語が読めて、文献にもアクセスできるようになった──そのとき一番ネックなのは、史料を前にしてそれをどう調理するのかということですから。

また、概説書では『岩波講座 世界歴史』(全24巻)シリーズがちょうど刊行中で、注目を集めています。少し前に出版されたものだと、講談社の『興亡の世界史』ミネルヴァ書房『MINERVA世界史叢書』シリーズも良いです。近年では『アジア遊学』という雑誌を出している勉誠出版がかなり力を入れている印象があります。

避けた方がよい文献は、例えば大航海時代の東南アジア史でヨーロッパのことしか書かれていないような本。あるいは、中国史で元だけ抜けているような本です