──これまでの経験は現在の業務に活かされていますか。

私はここで仕事をするようになって、展覧会の準備などでまったく違う専門の勉強や調査や説明などを行う必要に迫られることがしばしばあります。でも、どうにか形にできているのは、考古学研究で博論を書くまでやっていたから、何とか食いついていけていると思っています。

──例えばどのようなことでしょうか。

例えば、分野ごとの詳しい知識はなくても、分野ごとに押さえておくべき肝があることを知っていれば、そこを抑えにいこうと思えますよね。また、重要な文献があったり、研究史があったり、ということや研究手法がそれぞれにあることをメタ知識として知っています。

ほかにも、例えば調査でデータを集め、資料を集め、それらをどういう風にまとめられるかということは基礎として重要なところですが、これも「研究」の課程で経験しています。

集めたデータを元にこの先どうなるのかについて仮説を立てて、さらに分析して、説の正しさを証明することなどは文理変わらず必要ですし、研究以外にも役立てやすいところだと思います。

Q2-3. 具体的にどのような経験が活きていますか。

より具体的な話をすれば、私は博物館での仕事の経験もあったので、ヒトモノカネのマネジメントをやっていたし、考古学でもそのあたりは必要だったので、役立たなかったことはないです。

例えば、機材は何を使うか、日程をどう組むか、予算をどう使うかなどが考古学調査には必要不可欠です。さらに国際調査のマネジメント、例えばロシアで発掘調査をする場合はモスクワの考古学研究所に発掘調査の申請が必須なのですが、そのネゴシエーションの経験もあります。考古学で培った知識・経験は博物館での仕事に活かされている。

逆に一番使っていないのは博論での知識というのがなんとも皮肉ですね。

次はカッコつきの研究について伺います。次回に続きます。