ジンブン独学ノートの実践編では、実際の研究について紹介します。研究へのモチベーションから、どのように日々の調査行われているのかまで、インタビュー形式でお届けします。
第十回となる今回のインタビューでは、梶谷真司先生にお話をうかがいます。梶谷先生といえば、学校や企業、地域コミュニティなどでの「哲学対話」で広く知られています。2023年11月には、その哲学対話の実践をまとめた『哲学対話の冒険日記 われら思う、ゆえにわれらあり』(あいり出版)を出版されました。
これまでの歩み
Q1-1. 本日はどうぞよろしくお願いします。今回は、「梶谷先生といえば哲学対話」のイメージから少し離れて、先生のここまでのあゆみをうかがっていきたいと思います。
よろしくお願いします。大学に入学したばかりのころは、中国の思想や哲学を学んでみたいと思っていました。高校時代、漢文が好きだったし、中国思想に興味があって本もいろいろ読んでいたので。
当初は中国哲学を研究しようと思っていたのですが、いざ入学してみると、同じクラスで中国哲学志望の学生がいたんですが、なんというか、めちゃめちゃ感じの悪い人で……(笑)この人と一緒に勉強するのは絶対嫌だと思って、5月くらいには中国哲学をあきらめました。
──あんなに学びたかった中国哲学だったのに!まさかの展開であきらめることになってしまいました。学部3年生からは専門の学部に進んでどうされたのでしょうか。
3年生からは宗教学に進むことにしました。といっても積極的に選んだのではなく、ラテン語とギリシア語が必修ではなく、自由選択が多かったからですが。
卒業論文は、上田先生の専門でもあるハイデガーの『存在と時間』を題材に書きました。といっても、今の自分から見れば全然、大した論文じゃない。大学院に進むなら、私だったら不合格にしているかも、と思うくらいのものです。ともあれ、1989年に学部を卒業しました。