『あなたが広げる人文学 ージンブン学をジブンごとにー』参考書籍リスト
はじめに
本日の講座では人文学の営みにおいて重要な「問いを立てる」ことについて、ジンブンアトラスというワークショップ形式でみなさんにも体験していただきました。人文学について少しでも理解でき、自分でも明日から取り組んでみようと思っていていただければ幸いです。
とはいえいきなり「人文学」に取り組むのはあまりにも範囲が広くて難しいはずです。そこで皆さんの興味関心に引っかかるかもしれない、そして世界を広げてくれるかもしれない、書籍をいくつか選んでみました。書籍の多くは「新書」の形をとっており、読みやすいものばかりです。
「本は全て読まなければならない」という義務感にとらわれず気になったところから是非つまみ食いしてみてください。そして気になった本については、関連する本を図書館で探すなどして、どんどん自分だけの人文学を広げていっていただければと思います。
著:伊藤亜紗
光文社新書
人は外界から得る情報のほぼ全てを視覚に頼っています。もしある日目が見えなくなってしまったらどうなってしまうのでしょうか?そして視覚障害者はどのように世界を「見て」、どのように自分の体を捉えているのでしょうか?世界の「見方」を変えれば、自分を含めた世界そのものが変わっていくという、人文学が行われるまさにその様子を美学者とともに楽しんでみましょう。
『たのしいプロパガンダ』
著:辻田真佐憲
イースト新書
「本当に恐ろしい大衆扇動は、娯楽(エンタメ)の顔をしてやってくる」。プロパガンダといえば、国家・政府が民衆におしつける、つまらなくてうさんくさいものを想像しがちですが、本書が扱うのはその対極。私たちが楽しい!面白い!と思うものが実は最も強力なプロパガンダだというのです。日本やお隣の国々の歴史的な事例だけでなく、最近のカルチャー(例えば“萌えミリ”)の例も豊富に紹介。ニュースや広告、はたまた街角で見かけるあれこれに、「これってもしかして『たのしいプロパガンダ』では…?」と疑ってかからずにはいられません。読んだ後には世界の見え方がじわじわと変わっていく、スリリングな一冊です。歴史学だけでなく、比較文化研究や表象文化研究の第一歩にも。
さいごに
人文学は自分が気になったことについて調べるところから始まります。「学問」と聞くと難しそうですが、問いを立てて答えを探していく、というと簡単そうに聞こえてきませんか。
本を読むのは勉強のため、ということももちろんあります。ですが、より大切なこととして本を読むことで他の人の問い・興味関心に触れる機会が増えます。本に書いてあることを盲目的に信じるのではなく、むしろ書かれていることに対して本当かなと疑問を抱くことで、新たな探究が始まります。そして自分では思いつかなかったような筆者の思考・視点を得ることで自分の中に新たな考え方が生まれることが本を読む理由であり、楽しさの一つです。
人文学が取り扱う範囲は他のどの学問分野よりも広大で、誰でも今日から人文学を始めることができます。是非これを機会に人文学を広げる活動に参加していただければ、それに勝る喜びはありません。